ゲノム編集先端 人材育成プログラム

活動報告

2022年2月15日、本プログラムライフサイエンスコース担当教員 田川訓史准教授、有本飛鳥助教(統合生命科学研究科附属臨海実験所)のグループの研究成果がプレスリリース されました。

詳細は本学ホームページをご覧ください。

本研究成果のポイント
  • 背骨がある動物(脊椎動物)では、万能細胞として知られるiPS細胞(※1)は、数種類の因子を人為的に活性化することによってのみ得られるが、ギボシムシ(※2)は、そのiPS細胞を作り出すのに必要なリプログラミング因子(※3)を使って、再生していることを解明。
  • 脊椎動物は、万能細胞を作り出すことが可能な遺伝子ネットワークを保持しているにもかかわらず、それをなぜか再生には利用しておらず、再性能が著しく限定されている。一方、脊椎動物と同じ分類群で再性能が非常に高いギボシムシにおいて、同様の遺伝子ネットワークが存在し、 かつ再生に利用されてることが明らかとなったので、ギボシムシの再生研究が、今後ヒトなど脊椎動物の再生医療の理解と発展に繋がる。
  • (※1) iPS細胞とは、induced Pluripotent Stem Cellsの略で、山中教授らによって開発された人工性多能性幹細胞のことです。体細胞に数種類の因子を導入し培養することで、さまざまな細胞に分化する能力と無限に増殖できる能力をもつ細胞、人工性多能性幹細胞がつくりだせます。

    (※2) ギボシムシは、全て海棲で背骨がない動物(無脊椎動物)であり、半索動物門に分類されます。半索動物門は、ヒトなどの脊索動物門やウニなどの棘皮動物門と共に、同じ分類群、新口動物群に分類されますが、ギボシムシはその中でも再生能が非常に高いです。新口動物(後口動物ともいう)とは、左右相称動物のうち、発生において、原口が将来肛門やその周辺になる動物群の総称です。動物門が30数門あるうち、半索動物門、脊索動物門、棘皮動物門の3門のみがこの分類群に含まれます。これと対照に、残りのほとんどの左右相称動物は、原口が将来口またはその周辺になる動物群で、旧口動物(前口動物ともいう)と呼ばれます。

    (※3) 分化した細胞を、初期の段階、つまり未分化な状態へと導く因子のことです。山中教授らがiPS細胞の開発時に発見したOct4, Sox2, Klf4, c-Mycの4つの転写因子(山中因子)が有名です。我々は、リプログラミングの開始に重要なOct4に重点をおいて研究を行いました。